スタイリッシュな2人対戦ゲーム『Bossa / 坊茶』のお話:第10回
文・写真:前田弘志(Bossaチームリーダー)
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(2023.9.14 改稿)
みなさま、こんにちは。今日は、Bossa / 坊茶のフラッグシップエディション「匠のアート版」シリーズについて詳しくご紹介したいと思います。
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Bossaの最初の構想、それが「匠のアート版」でした
私たちはゲームデザインが大好きで、とても情熱を持ってボードゲームづくりに取り組んでいます。一方で、ゲームデザインを始める何十年も前から活動してきた、グラフィックアーツやプロダクトデザインのスタジオでもあります。ですから、私たちのゲームの作り方はちょっと普通とは違っていて、たいていは、ゲームシステムのデザインとコンポーネントのデザインは同時に始まり、並行してブラッシュアップ作業を進めていきます。
そんな私たちが、Bossaのデザインに着手した最初期に考えていたコンポーネントが、ほぼ「匠のアート版」の仕様なのです。美しい断面を持ち、心地よい手触りと重量感のタイルたち。それはシンプルながら知的なシステムをより引き立ててくれ、ゲーム体験をより豊かなものにしてくれるはずだと考えました。
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最初期のデザイン計画スケッチ。当初は8層構造の設計でした。(2021年)
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アルファベットと漢字の組み合わせによるネーミング(海外展開も意識)は、チームのみんなで約100案の候補を考え、その中から選びました。(2021年)※2022年12月26日商標登録
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しかしながら、商品化を前にして私たちは、「作りたいもの」と「コスト/プライシング」の間で(Bossaに限らず、いつものことではありますが)悩み、揺れ、初版としてリリースするBossaを“スタンダード版の仕様”とする決断をすることになります。最終的にはカジュアルな仕様とリーズナブルな価格で、なるべく多くの方にBossaを楽しんでもらいたいという気持ちが勝ったのです。正直に言うと、数万円の価格は必至の「匠のアート版」が受け入れてもらえるのか、確信が持てなかったこともあります。
そして、2021年秋の「ゲームマーケット(東京ビッグサイト)」にて、『Bossa / 坊茶』スタンダード版は初めてお披露目されました。おかげさまでご好評をいただき、最初の生産ロット分は2日間のイベントでほぼ完売となりました。
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一度は断念した匠のアート版、キックスターターで復活!
一度はリリースを断念した「匠のアート版」でしたが、それでも私たちは、このうえなく美しく上質なコンポーネントのBossaの素晴らしさを分かち合える人たちが、たとえ少数ではあっても、世界にはいるのではないかと、2022年にKickstarterにてご支援を募ってみることにしました。
結果は、ありがたいことに、私たちの予想を遥かにこえる33カ国・300人以上のバッカーのみなさまにご支持をいただき、匠のアート版“水”と“花”に加え、クラシック版をリリースすることができたのです。
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匠のアート版“水”:清流をイメージした9層構造のタイル(2022年)
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匠のアート版“花”:花畑をイメージした9層構造のタイル(2022年)
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そして、2023年の新エディション“雪”
匠のアート版シリーズは、私たちが暮らす地球の自然の様相にインスパイアされた、美しい断面を持つ9層構造のコンポーネントが特徴です。2023年の新エディション“雪”は、私たちの地元・北海道の雪景色をデザインコンセプトとしました。
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匠のアート版“雪”:北海道の雪景色をイメージした9層構造のタイル(2023年)
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9層構造の素材は染色紙。紙の表面だけに色が印刷された紙とは異なり、染色紙は紙全体が染まっているので断面まできれいに色が現れています。私たちは9枚の色違い・厚さ違いの染色紙を積み重ねることで、断面に「景色」をデザインしているわけです。そのデザインワークの過程では、ひとつの組み合わせを決定するまで、数百もの紙のサンプルからさまざまな組み合わせを試し、何度も試行錯誤を繰り返していることは言うまでもありません。
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デザイン作業の様子の動画 (→ YouTube)
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表情豊かな“雪”のドットタイル
匠のアート版“雪”のドットタイルの表面の紙は、ちょっと言葉で表現するのが難しいのですが、半反射性で、ちょっぴりシルバーがかった、ライトブルーです。半反射性というのは、反射しすぎないためゲームの妨げになることなく、かつ雪のように、見る角度によってさまざまな表情(色)を見せてくれるという美しさがあります。これは、ソリッドな色の表面を持つ“水”や“花”と大きく異なる特徴です。実際に、写真ごとに違う色に写っているので「どれが本当の色なのか?」と思われるかもしれませんが、どれも本当の色と言えるのです。
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匠のアート版“雪”のドットタイル
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匠のアート版“雪”のドットタイル、クローズアップ
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雪”のドットタイル、別アングルからのクローズアップ
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心地よい重量感と手触り
“雪”のタイルのサイズは、35mm×35mm×4.5mm。スタンダード版のタイルよりもひとまわり大きく、クラシック/クラシック ネオ版のものよりも厚さがあります。
1枚の重量は4.5gで、クラシック/クラシック ネオ版の2.0gの2倍以上。手に持ったときの重量感は格別です。
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手に持ったときの重量感が心地よい“雪”のドットタイル
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黒白のドットは箔押し&かすかなデボス(凹)加工。表面は保護層として光沢コーティング(PP)加工されています。裏面は日本的なエンボスパターンの紙(“花”と同じもの)で、軽いニス塗工仕上げ。とても優雅な手触りです。そして、凹凸ある断面の手触りにも独特の心地よさがあります。
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ドットタイルの裏面:匠のアート版“雪”は和様のエンボスパターン(右)、クラシック版はプレーンでナチュラルなテクスチュア(左)
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匠のアート版“雪”は断面の独特な手触りにも心地よさが
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落ち着いた色合いのアクションマーカー
匠のアート版シリーズのアクションマーカーは、ドットタイルと容易に区別できるように、ドットタイルとは手触りの違う素材を用い、厚さも薄くしています。アイコンは銀色の箔押しです。
ベースカラーは、エディションごとにドットタイルの色合いとマッチするようコーディネートされていて、“雪”のアクションタイルは“水”や“花”のものより、わずかに彩度の低い落ち着いた色合いを選択しました。
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アクションマーカー:匠のアート版“水”(左)、“花”(中央)、“雪”(右)
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ペーパークラフトの匠がひとつひとつ手作り
匠のアート版シリーズのドットタイルやアクションマーカーは、ひとつひとつ手作りされています。このクォリティで仕上げるためには、非常に高い技術と繊細な作業、さらにはアーティスティックな感覚(これ、重要!)が必要なため、実は匠のアート版を作ることができるのは、たった一人の職人さんだけ。私たちのスタジオと何十年も仕事をともにしてきた、ペーパークラフトの匠・田所眞行さんです。
彼の仕事ぶりはとにかくスゴいのです。なので、後日改めて製造工程をご紹介する投稿をしたいと思います。
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匠のアート版“花”の完成品をルーペを使ってひとつひとつ検品中
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美しいコンポーネントを、美しい箱に収納
前回のコラムにてご紹介しましたように、匠のアート版“雪”は、雪のようにキラキラする表面素材の、日本的な八角形の箱(これも製作には高度な技術が必要)に収められています。優美で機能的な紐と房を外し、蓋を開けると、身箱に美しくセットされたコンポーネントが現れます。蓋の裏側にはポケットがあり、説明書やシリアル番号証をスッキリ収納することができます。
見えないところまで美しく― 匠のアート版“雪”はコンポーネントだけではなく、箱まで「匠のアート」なのです。
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匠のアート版“雪”のパッケージング
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『Bossa / 坊茶』匠のアート版“雪”で美しく遊ぶ贅沢な時間。箱を開けることから始まり、そして、箱を閉じるまで。あなたのゲーム時間とプレイ体験がより素敵なものになりますように。
今回も読んでくださりありがとうございました。そして、私たちのプロジェクトへのご支援にも改めて感謝申し上げます。
Bossaがあなたの素敵なコレクションの一部になり、末永くゲームを楽しんでいただければ幸いです。
前田弘志(Bossaチームリーダー)
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2022年リリース版の「匠のアート版」“水”と“花”は、公式ショップでどうぞ
匠のアート版“水”と“花”は、バナナムーンゲームズ公式オンラインショップ限定発売中です。通常数日以内にお届け可能です。(https://bananamoon.official.ec)
2022年版の“水”(左)と“花”(中央)、2023年版の“雪”(右)
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Bossa / 坊茶の新バージョン
「匠のアート版“雪”」「クラシック ネオ版」「拡張キット」は公式ショップ限定発売!
お求めは → こちら(https://bananamoon.official.ec)
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Bossa / 坊茶 コラム 各話へのリンク
- Vol.16:ペーパークラフトの匠、その繊細で芸術的な手仕事(2023年改稿版)
- Vol.15:なぜBossaは何度も繰り返し遊べて、飽きないのか
- Vol.14:Bossa / 坊茶をオンラインで試そう!
- Vol.13:お出かけBossa:スタンダード版の魅力(2023年改稿版)
- Vol.12:ナチュラルな風合いを日常に:クラシック ネオ版の魅力
- Vol.11:2023年、Bossa / 坊茶に拡張コンポーネントが登場!
- Vol.10:美しく遊ぶ贅沢な時間:匠のアート版の魅力
- Vol.09:雪のようにキラキラする箱のお話
- Vol.08:北海道の「雪景色」をデザインコンセプトに
- Vol.07:Bossaは何度も繰り返し遊べる、飽きない。
- Vol.06:お出かけBossa:スタンダード版の魅力
- Vol.05:ナチュラルテイスト:クラシック版の魅力
- Vol.04:「匠のアート版」の耐久性ってどうなの?
- Vol.03:「匠のアート版」は、箱だって匠のアート!
- Vol.02:匠のアート版 “水”と“花”、実は手触りが違う
- Vol.01:ペーパークラフトの匠、田所眞行さんのこと
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