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我知城/GACHIJO =4人の忍者と秘宝の城= のお話:第4回
文:前田弘志(GACHIJO チームリーダー)
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こんにちは。我知城/GACHIJOチームリーダーの前田弘志です。
今日は『我知城/GACHIJO =4人の忍者と秘宝の城=』の、作者的推しポイントその②「忍の攻防」についてご紹介したいと思います。
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プレイヤー同士のインタラクションも醍醐味!
動く迷路の城で知恵と忍術を駆使するトレジャーハンティングゲーム『我知城/GACHIJO =4人の忍者と秘宝の城=』。前回のコラム[→ GACHIJO デザイナー日記 03]では「動く迷路を攻略しよう」というお話でしたが、今回は「敵を攻略しよう」というお話をしたいと思います。
ゲームデザインという観点で言えば「迷路の攻略」だけでもゲームは成立するとは思うんですね。知恵を使った個人プレイ主体のアブストラクトゲームにはできるわけで、それはそれでアリだと思います。ただ、私たちは自分たちの主義として、私たちのゲームには常に「プレイヤー間のインタラクション」と「運」の要素を入れたいと考えています。前作の『Bossa/坊茶』でも、見た目はアブストラクトっぽいものの、「アクション」を使ったインタラクションや「引き運」の要素をしっかり盛り込んでいます。
で、『我知城/GACHIJO』のインタラクション要素の一つが「忍の攻防」になります。他のプレイヤーを襲撃したり、襲撃から逃げたり、襲撃にやられたり、というようなことですね。
こんな感じ↓です。20秒の動画をご覧ください。
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「襲撃成功」は任務達成条件の一つ
『我知城/GACHIJO』では、各プレイヤーは「ミッションカード*」に示された任務の完遂を目指してプレイを進めます。下の写真のミッション例では、上から3列目に「忍 一枚以上」とあります。ここでの「忍」とは、襲撃成功時に受け取る褒美のトークンのこと。つまり、襲撃を1回以上成功させることがミッション要件という意味です。
※「ミッションカード」は難易度別の4種類から選べます。写真は「難易度3」の例です。
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他の忍者を襲撃するには、相手を襲撃することができる位置*まで、密かに忍び寄ります。そのためには、賢く迷路の壁をスライドさせる必要があるでしょう。どの忍者も、そうやすやすと襲撃される位置で自分のターンを終えていないはずですから。
襲撃できるゾーンに入ったら「忍同士の攻防」になります。詳しいルールはこちら[→ 武器の使い方]をご覧いただくとして、端的に言うと相手に逃げられたら襲撃失敗、相手を倒せたら襲撃成功です。
*ターゲットを襲撃することができる位置や範囲は、武器の種類によって異なります。
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襲撃失敗の場合は何も得られませんが、襲撃を成功させた場合は相手からアイテム(宝物、水晶、道具のいずれか)を一つ奪い、かつ「忍」の褒美トークンをゲットします。
倒された忍者は「傷」を負って自陣に戻され、次のターンは手数や行動が制限されます。負傷中なので、遠くにも行けないし、水場に入ったり屋根に登ったりすることができないのです。そんな時に「薬」を持っていればラッキー。傷を癒すことができ、制限が解除されます。
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『GACHIJO/我知城』に登場する忍の武器
鉤爪(かぎづめ)
[襲撃用]鋭い爪を手の甲に付ける武器。至近距離から相手を突く。
刀(かたな)
[襲撃用]侍の刀よりも短く反りがない忍者特有の武器。斜方向にいる相手を切りつける。
手裏剣(しゅりけん)
[襲撃用]風車のように回転させて打ち(投げ)、離れた位置から相手を襲う武器。
煙玉(けむりだま)
[逃走用]敵に襲撃された際、煙幕を発生させる火薬玉。相手が視界を失っている隙に逃げる。
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サイドストーリー:史実とフィクション
道具や武器をたくさん携行しない
『我知城/GACHIJO』では、忍者が一度に保有できる武器と道具の数は、それぞれ3つまでに制限されています。忍者の武器や道具には本当に数多くの種類がありますが、作戦決行の際に携行するのはごく限られた数のものでした。常に隠密行動に適した身軽さが必要だったからです。そのかわり、事前に行動予定場所のあちこちに道具や武器を隠しておき、必要に応じてそこから取り出し使ったとされています。
このゲームでの武器や道具の保有制限や、任務の道中で武器や道具を取得するしくみは、そうした史実に基づいています。
殺すことを主目的としない武器
侍と忍者、どちらも同じようなイメージがあるかもしれませんが、大きな違いがあります。侍は兵士で、忍者はスパイだということ。兵士が生死をかけて殺し合うのに対し、スパイは重要なものを「生きて」持ち帰るのが任務ですから、自分が死ぬこともダメだし、無駄に相手を殺す必要もありません。ですから、忍者の武器は任務を邪魔する者の行動能力を落とすことが主目的であり、破壊力は弱いけれどもコンパクトで命中しやすいという特徴がありました。
それが、『我知城/GACHIJO』での「忍者は決して死なず、しかし負傷したら行動が制限される」というコンセプトの源流となっています。
自分は「ぜったい大丈夫!」という自己暗示
「忍」の褒美トークンにプリントされている漢字には、ちゃんと意味があり、「九字護身法(くじごしんほう)」という術で忍者がむすぶ9つの印(ポーズ)をあらわしています。
「臨兵闘者皆陣列在前」とは現代の言葉に言い換えると「たたかうときは、先頭に立って向かっていく」という意味とのこと。これを唱え印をむすぶことで、忍者は自分を励まし、自分は絶対に大丈夫と自己暗示にかけて、苦難に立ち向かっていたそうです。
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ということで、このゲームはフィクションではありますが、史実をベースにした設定もかなり取り入れています。私たちはこのゲームのために、学術的な忍者研究の最先端の地であり、忍者の里として知られる伊賀に滞在し取材してきました(手裏剣も投げました!)。そこでの調査成果がゲームの設定に反映されているのです。
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GACHIJO チームリーダー 前田弘志
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マーティン・ネーデルガード・アンデルセン(Camp Games Aps 代表)はデンマークのゲームデザイナーで、2007年に最初の作品が出版されました。以降、世界中でこれまでに250種類以上のゲームを発表、日本でも『Bandido(バンディド/すごろくや刊)』などが出版されています。ゲームデザイナーとしての活動と並行し、1年のうち4〜7ヶ月は世界を旅し、ライターや写真家としても活躍しています。
バナナムーン・ステュディオは、北海道を拠点とする1990年創業のクリエイティブ・プロダクションで、30年以上にわたりグラフィックデザインやエディトリアルデザイン、プロダクトデザインに携わってきました。「笑顔の時間を提供するゲームづくり」をテーマに、2019年からオリジナルボードゲームの制作・出版に取り組み、バナナムーンゲームズ(Banana Moon Games)のブランド名で、これまでに15タイトル以上(バリエーション版を含む)をリリースしています。「非言語依存」「戦略と運のバランスミックス」「コンポーネントの美しい」ゲームづくりを得意とし、2022年・2023年には『Bossa(坊茶)』の国際クラウドファンディングで2,401%達成、製品を40カ国に出荷しました。